東京に住んでいると、地上波でプロ野球中継を目にする機会は週末に限られてきています。平日はニュース番組やバラエティが編成の中心で、地上波での野球中継は少数派。
一方で、BS放送やCS(スカパー!など)、さらには**インターネット配信(DAZN、Rakuten パ・リーグ Special、J SPORTSオンデマンドなど)**では、ほぼ毎日どこかしらで試合を観ることができる状況が続いています。
また、地方ではその地域のフランチャイズチームの中継が根強く放送されています。たとえば、北海道であれば北海道日本ハムファイターズ、仙台なら東北楽天ゴールデンイーグルスといった具合に、ローカル局がその地域の熱を映像に乗せて届けているのです。
ホームチーム制作の中継映像が主流に
ここ数年で増えてきたのが、主催球団が中継を自社制作しているケースです。たとえば、横浜DeNAベイスターズは「ベイスターズソフト」、阪神タイガースは「タイガース・アイ」という制作チームを持ち、自前のカメラとスタッフで番組を構成しています。
CSやBSで放送される試合の中には、こうした球団制作映像をもとに、各放送局が実況と解説だけを差し替えて放送するスタイルも多くなりました。つまり、映像制作の主導権が球団サイドに移りつつあるというわけです。
この動きは、スポーツ番組制作に携わりたい人にとっては大きなチャンスでもあります。従来の「テレビ局で作る」中継から、「球団・配信会社・制作会社が連携して作る」中継へと変化しており、関われるフィールドが広がっているのです。
地上波の“サブチャンネル中継”という新しい形
地上波での放送が減る中で、独立局を中心に新たに登場しているのが「サブチャンネル」を活用した中継です。
たとえば:
- 17:45〜19:00:サブチャンネルで中継開始
- 19:00〜21:30:メインチャンネルに移動
- 21:30〜最大23:00:再びサブチャンネルで延長放送
といったタイムテーブルで放送されることもあります。これにより、試合前のセレモニーから、試合後のヒーローインタビューまで、中継の“物語”を完結させられるようになりました。
独立局がこうした編成に柔軟なのは、視聴率の縛りが比較的緩いため。ネットワーク局ではまだ導入が進んでいないところもありますが、今後は“編成の柔軟性”も番組制作側の武器になっていくでしょう。
【転職者向け】スポーツ番組制作に関わりたいあなたへ
スポーツ中継の現場では、ライブ感、臨場感、そしてその裏側にある「物語」をいかに伝えるかがカギです。
中継の技術スタッフ、ディレクター、実況・解説のコーディネート、さらには配信プラットフォーム向けの映像編集・SNS用クリップ制作など、業務の幅は非常に広いです。最近では、TikTokやInstagram向けにショート動画を編集するスポーツ局の専任スタッフも登場しています。
未経験から目指すなら、以下のようなアプローチも可能です:
- 映像制作会社に入って、球団や配信会社の案件に関わる
- スポーツ系YouTubeチャンネルやSNS動画チームで編集経験を積む
- 地方局のスポーツ番組制作で現場経験を得る
- フリーランスでスポーツ番組のアシスタントやサブ業務に入る
「テレビ局に入らなきゃスポーツ番組は作れない」という時代はもう終わりです。自分のスキルと興味を活かして、どのポジションで関われるかを戦略的に考えることが大切です。
【転職者向け】今、スポーツ番組の現場ではどんな人材が求められている?
◆ 求人動向:スポーツ番組制作に関する仕事は多様化
2025年現在、スポーツ番組制作の求人は従来のテレビ局だけでなく、制作会社、映像配信会社、球団系メディアチームなどにも広がっています。
特に需要が増えているのは以下のジャンル:
- 映像編集・動画クリエイター職(Premiere Pro、After Effects経験者は強い)
- ライブ配信オペレーター(YouTube Liveや独自配信システム対応)
- スポーツに特化したSNS運用ディレクター(X/Twitter、Instagram、TikTok)
- 現場系AD・ディレクター候補(スポーツ中継の運営、進行、台本作成など)
求人は通年でありますが、プロ野球のシーズンイン(3月)やオフシーズン(10月~年末)前後に募集が増える傾向があります。これは、体制刷新や新規番組・配信企画の立ち上げがあるためです。
◆ ポジション別:どんな仕事があるの?
ポジション | 主な仕事内容 | 求められるスキル |
---|---|---|
AD(アシスタントディレクター) | 機材準備、台本作成補助、進行サポート、ロケ同行など | スケジュール管理、基本的なPC操作、体力 |
ディレクター | 構成演出、カメラ割指示、現場統括、選手インタビュー演出など | 経験・企画力・チームマネジメント力 |
テクニカルスタッフ(カメラ・音声・VEなど) | 中継車・スタジオでの撮影・音声・映像管理 | 専門技術知識、機材操作スキル |
編集・ポストプロ | 試合ハイライト編集、SNS向けショート動画、VTR編集 | Adobe Premiere、After Effects経験 |
配信オペレーター | ネット配信の画面切り替え、コメント管理、トラブル対応 | OBS、vMix、ネットワーク知識 |
SNS・広報担当 | 試合速報、選手のオフショット投稿、エンゲージメント向上施策 | ライティング、SNSトレンド把握、スピード感 |
◆ キャリアを広げるポイント
- スポーツ愛+技術力=強い武器
- 野球やスポーツへの理解は、ディレクションや編集において明確なアドバンテージになります。
- 「局に入る」以外の道も当たり前に
- テレビ局の社員だけでなく、番組を作っている制作会社や、球団専属チーム、Web動画制作会社も選択肢に。
- スキルアップしながら“現場に入る”のが近道
- 未経験でもADからスタートすれば、現場で経験を積んでディレクターや企画職を目指せます。
- 副業やフリーランスとして始める道もある
- SNSクリエイターや動画編集者として、まずは副業から関わる人も増加中です。
✔ こんな人に向いています!
- スポーツに関わる仕事がしたいけれど、プレイヤーじゃなく裏方で関わりたい人
- チームで何かを作り上げるのが好きな人
- 縁の下の力持ちを楽しめる人
- 映像・コンテンツが好きで、成長意欲がある人
スポーツ番組の制作は、華やかに見えて地道な努力の積み重ね。でも、だからこそ中継がうまくいった瞬間や、選手の一言が視聴者の心をつかんだときの喜びは格別です。
あなたの「スポーツを伝えたい」という想いを、ぜひ次のキャリアにつなげてください!