「テレビは終わった」は本当か?――神戸物産(業スー)の成長に見るテレビの現在地

テレビ業界に就職・転職を考えている皆さん、「テレビはオワコン」といった言葉を耳にすることもあるのではないでしょうか?
しかし、果たしてそれは本当なのでしょうか。

今回は、業務スーパーを展開する神戸物産という企業の業績から、いまのテレビの役割や可能性について考えてみたいと思います。

神戸物産は、全国に業務スーパーをフランチャイズ展開するほか、中食・外食、エコ再生エネルギーなどの事業も手がけていますが、売上の大半(2023年10月期で約93%)は業務スーパー事業によるものです。

では、その成長ぶりを見てみましょう。
最新の決算データをもとに、直近3年の売上と利益の推移を整理してみます。


【神戸物産 決算データの推移】

  • 2021年10月期
    売上高:3,834億円(前年比+11.0%)
    営業利益:329億円(+18.4%)
    純利益:273億円(+34.9%)
  • 2022年10月期
    売上高:4,317億円(+12.6%)
    営業利益:354億円(+7.5%)
    純利益:288億円(+5.5%)
  • 2023年10月期
    売上高:4,690億円(+8.6%)
    営業利益:379億円(+7.1%)
    純利益:305億円(+5.9%)

コロナ禍以降も、安定した成長を続けている神戸物産。その成長の要因は価格や商品力だけではありません。
テレビをはじめとするマスメディアをうまく活用したPR戦略も、その裏にあるのです。

お昼の情報番組やバラエティ番組では、タレントが業務スーパーで買い物をする企画が定番化しています。そこで紹介された商品が、SNSでも拡散され、週末には実際に店舗に足を運ぶ人が増える…という流れができあがっています。

いわば、テレビ→SNS→実店舗という「購買行動の導線」を、テレビが起点になって生み出しているのです。
これは外食チェーンやコンビニ商品でも同じで、情報番組で紹介された直後に公式サイトがアクセス集中でつながりにくくなる現象もたびたび起きています。


テレビは「オワコン」ではない。むしろ「信頼×拡散力」の強力なハブ

確かに視聴率は一昔前ほどではないかもしれません。
しかし、テレビの持つ「信頼性」や「話題の起点としての力」は、依然として強く、他メディアを連動させる中心軸としての価値があります。

テレビ業界で働くということは、単に番組を作るだけではなく、こうした「世の中を動かす仕組み」を理解し、創り出す立場になるということです。
就職・転職を目指すみなさんには、こうしたテレビの“いま”の役割や実力を知った上で、自分がどう関わっていきたいかを考えていただけたらと思います。

企業の決算数字から見える「テレビの現在地」。
これからのメディア人にこそ、広い視野と分析力が求められています。